2026年10月1日

求人1件の本当のコスト、計算したことありますか——応募単価・採用単価の出し方とExcel記入例

「ハローワークは無料だし、有料媒体は20万円。コストはそれだけ」

そう考えているなら、採用コストの一部しか見ていない可能性があります。求人票を書く時間、応募者に連絡する時間、面接の時間——これらはすべて、社長や社員に給料を払っている時間の中で行われています。請求書が来ないだけで、コストがゼロなわけではありません。

結論から言うと、求人のコストは次の式で出せます。

総コスト = 媒体費 + 社内の人件費(時間×時間単価) + その他の実費

これを応募数で割れば「応募単価」、採用人数で割れば「採用単価」です。媒体ごとにこの2つを並べると、「なんとなく続けている媒体」と「実は効いている媒体」の区別がつくようになります。

本記事では、この計算の手順とExcelの記入例に絞って解説します。採用予算の上限の決め方は「採用にいくら使っていいのかわからない」——求人費用の考え方、選考の通過率など採用の数字全般は採用の数字を管理していますか?で扱っています。


「媒体費だけの応募単価」と「実質の応募単価」は別物

求人媒体の掲載を延長するか打ち切るかの判断ラインでは、応募単価を「掲載費用の総額÷その媒体経由の応募数」で概算する方法を紹介しました。媒体同士をざっくり比べるだけなら、この計算で十分です。

ただ、この式には社内の手間が入っていません。本記事では、ここに社内の人件費とその他の実費を足したものを「実質の応募単価」と呼んで区別します。

呼び方 計算式 向いている使い方
媒体費ベースの応募単価  →媒体費 ÷ 応募数  →有料媒体同士をすばやく比べる
実質の応募単価  →(媒体費+社内人件費+その他実費)÷ 応募数  →無料媒体も含めて、本当に効率がよい媒体を見極める
実質の採用単価  →(媒体費+社内人件費+その他実費)÷ 採用人数  →「1人採るのにいくらかかったか」を把握する

媒体費ベースでは無料のハローワークは常に0円になり、比較の対象から外れてしまいます。実質の単価で見ると、無料媒体にもそれなりのコストがかかっていることがわかります。

ステップ1:コストを3つに分けて洗い出す

まず、1つの求人(1媒体・1回の掲載期間)について、かかったコストを3つに分けて書き出します。範囲は「求人を出してから採用が決まるまで」です。入社後の教育費や早期離職による損失は、別の問題として採用ミスの代償——採用ミス1件でいくら損するかで扱っています。

① 媒体費

請求書がある費用です。掲載料、オプション料金、クリック課金型の求人広告であれば期間中の利用額を合計します。無料媒体は0円です。

② 社内の人件費

ここが見落とされやすい部分です。採用に使った時間を、次の3つの工程に分けて見積もります。

  • 求人票の作成・更新——原稿を書く、写真を用意する、媒体の管理画面に入力する時間
  • 応募対応——応募の確認、書類の読み込み、日程調整の連絡、不採用の連絡
  • 面接——面接そのものの時間に加え、準備と評価のすり合わせの時間。面接官が2人なら2人分

時間が出たら、担当者の「時間単価」を掛けます。時間単価は、月給を月の所定労働時間で割れば概算できます。たとえば月給30万円・月160時間なら、約1,875円です。社会保険料の会社負担分まで含めると実際の負担はもう少し上がりますが、まずは概算で構いません。

社長自身が対応している場合も、社長の時間を同じように換算します。「自分の時間はタダ」と考えると、社長が採用にかけている時間の重さが数字に表れません。

正確な時間を毎回記録するのは大変なので、「応募1件あたり約30分」「面接1回あたり準備込みで約1.5時間」のように、自社の目安を決めて件数を掛ける方法でも十分です。

③ その他の実費

面接に来てもらう応募者の交通費を負担している場合や、求人用の写真撮影を外注した場合など、媒体費以外で実際に支払ったお金です。発生しなければ0円で構いません。

ステップ2:応募単価と採用単価を計算する

3つを足して総コストを出し、応募数と採用人数で割ります。

  • 実質の応募単価 = 総コスト ÷ 応募数
  • 実質の採用単価 = 総コスト ÷ 採用人数

具体例で見てみます。以下は説明用の架空の数字で、相場を示すものではありません。時間単価は2,000円、応募対応は1件30分、面接は準備込みで1回1.5時間と仮定しています。

項目 媒体A(有料求人サイト) 媒体B(ハローワーク) 媒体C(クリック課金型)
媒体費  →200,000円  →0円  →50,000円
応募数  →10件  →3件  →8件
面接数  →4回  →2回  →3回
採用人数  →1人  →1人  →0人
求人票作成  →3時間  →4時間  →2時間
応募対応  →5時間  →1.5時間  →4時間
面接  →6時間  →3時間  →4.5時間
社内人件費  →28,000円  →17,000円  →21,000円
総コスト  →228,000円  →17,000円  →71,000円
媒体費ベースの応募単価  →20,000円  →0円  →6,250円
実質の応募単価  →22,800円  →約5,667円  →8,875円
実質の採用単価  →228,000円  →17,000円  →算出不可(採用0人)

この表から読み取れることは3つあります。

1つ目は、無料のハローワークも0円ではないことです。媒体Bは媒体費こそ0円ですが、求人票の作成・応募対応・面接に合計8.5時間、金額にして17,000円分の社内工数がかかっています。

2つ目は、応募単価が安くても、採用につながっていなければ意味が薄いことです。媒体Cは応募単価だけ見ると媒体Aの半分以下ですが、採用は0人です。応募単価と採用単価は、必ずセットで見ます。

3つ目は、応募が多いほど社内の手間も増えることです。応募対応や面接の時間は件数に比例して増えるため、条件に合わない応募が多い媒体は、媒体費には表れないコストがかさみます。

ステップ3:Excelで記入表を作る

毎回電卓で計算するのは続きません。次のような表を1つ作っておき、掲載が終わるたびに1行ずつ追加していきます。

列 項目 入力内容・数式の例(2行目の場合)
A 媒体名 例:〇〇求人サイト
B 掲載期間 例:2026/10/1〜10/31
C 媒体費 請求額を入力
D 応募数 その媒体経由の応募数を入力
E 面接数 入力
F 採用人数 入力
G 求人票作成(時間) 入力
H 応募対応(時間) =D2*0.5(1件30分の場合)
I 面接(時間) =E2*1.5(準備込み1.5時間の場合)
J 時間単価 例:2000
K 社内人件費 =(G2+H2+I2)*J2
L その他実費 入力(なければ0)
M 総コスト =C2+K2+L2
N 実質の応募単価 =IF(D2=0,"-",M2/D2)
O 実質の採用単価 =IF(F2=0,"-",M2/F2)

入力するのは、ほぼ「媒体費・応募数・面接数・採用人数・求人票作成の時間」だけです。残りは数式で自動計算されます。応募数や採用人数が0のときにエラー表示にならないよう、N列とO列はIF関数で「-」を表示するようにしています。

前提として、応募がどの媒体から来たかを記録しておく必要があります。応募者に「何を見て応募しましたか」と確認する、媒体ごとに受付の電話番号やメールの件名を分けるなど、経路がわかる仕組みを先に作っておきます。

ステップ4:媒体ごとに並べて「続ける/やめる」を判断する

数字が出たら、媒体ごとに並べて比べます。判断の手順は次のとおりです。

  1. 同じ条件でそろえる——掲載期間の長さや募集職種が違うと、単純には比べられません。「同じ職種で、1ヶ月あたり」など、条件をそろえてから並べます
  2. 採用単価を先に見る——最終的な目的は採用です。採用単価が低い媒体は、応募単価が多少高くても続ける候補になります
  3. 採用0人の媒体は応募単価と応募の中身を見る——応募単価が低く、条件に合う応募も来ているなら、面接や条件提示など自社の選考側に原因がある可能性があります。応募単価が高く応募も少ないなら、打ち切りの候補です
  4. 原因が媒体か求人票かを切り分ける——同じ媒体でも、求人票の内容で結果は変わります。やめる前に、求人票の見直しで改善できる余地がないかを確認します

延長か打ち切りかの具体的な判断ラインは、求人媒体の掲載を延長するか打ち切るかの判断ラインで整理しています。比べる媒体すべてを本記事の実質の計算でそろえれば、その単価を同記事の「応募単価」の軸に当てはめて使えます。媒体費ベースと実質の単価を混ぜて比べると判断を誤るため注意してください。

1回分のデータだけで結論を出すのは早すぎます。数回分の記録がたまると、季節による変動や、求人票を直したときの変化も見えてきます。応募が減って単価がじわじわ上がっていく流れを放置すると何が起きるかは、「今のままでいい」を選び続けた1年で、何を失っているかも参考にしてください。


まとめ

  • 求人の総コストは「媒体費+社内の人件費+その他の実費」で出す。媒体費だけでは、社内の手間が見えない
  • 社内の人件費は「求人票作成・応募対応・面接」の時間に時間単価を掛けて出す。社長の時間も換算する
  • 総コストを応募数で割れば実質の応募単価、採用人数で割れば実質の採用単価になる
  • 無料の媒体も0円ではない。応募単価が安くても採用につながらなければ意味が薄いため、2つの単価はセットで見る
  • Excelで記入表を作り、掲載ごとに1行ずつ追加する。応募経路の記録が前提になる
  • 媒体ごとに条件をそろえて並べ、採用単価を軸に「続ける/やめる」を判断する。やめる前に求人票側の見直し余地も確認する

計算してみると、「一番安いと思っていた媒体が、実は一番手間がかかっていた」ということもありえます。採用のどこにお金と時間が消えているのか見当がつかない場合は、うちの採用、どこが間違ってる?——読みながらわかるセルフ診断で、自社の採用の弱点を洗い出すところから始めてみてください。


よくある質問

Q1. 社内の人件費まで入れる必要はありますか?媒体費だけではだめですか?
有料媒体同士をすばやく比べるだけなら、媒体費だけの計算でも目安になります。ただ、無料媒体と有料媒体を比べる場合や、応募は多いのに採用につながらない媒体を見極めたい場合は、社内の手間を含めないと実態とずれやすくなります。

Q2. 時間を正確に記録する余裕がありません。
「応募1件あたり30分」「面接1回あたり1.5時間」のように自社の目安を決め、件数を掛ける方法で十分です。大切なのは正確さより、毎回同じルールで計算して媒体同士を比べられる状態にすることです。

Q3. 採用人数が0人の媒体は、すぐにやめるべきですか?
1回の掲載だけで判断するのは早いことがあります。応募単価が低く、条件に合う応募も来ているなら、選考や条件提示の側に原因がある可能性もあります。応募の中身と求人票の内容を確認したうえで判断してください。

Q4. 複数の職種を同じ媒体でまとめて掲載している場合はどう計算しますか?
媒体費を職種ごとに分けられない場合は、1つの求人としてまとめて計算し、応募数・採用人数は職種ごとの内訳もメモしておくと、あとで比較しやすくなります。

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