2026年5月14日

「採用ミスの代償」——1人採用に失敗すると、いくら損するか

「求人にお金をかけたくない」という経営者は多くいます。気持ちはよくわかります。採用できるかどうかわからないものに費用をかけるのは、確かに怖い。

でも、問いを一つ変えてみてください。

「採用にお金をかけないこと」と「採用に失敗すること」、どちらの損失が大きいか。

多くの場合、答えは後者です。採用コストを抑えようとして、かえって高くつくことがある。今回はその構造を数字で見ていきます。

1. 「採用コスト」には見えていない部分がある

採用コストというと、求人媒体への掲載費用だけをイメージしがちです。ハローワークは無料、求人サイトは数万〜数十万円、という相場感。

でも実際の採用コストはそれだけではありません。採用から定着までのプロセス全体にコストは発生しています。

採用にかかる費用(表に出やすいもの)

  • 求人媒体の掲載費
  • 面接にかける経営者・担当者の時間
  • 採用事務(書類選考・日程調整・連絡)にかかる時間

採用にかかる費用(見えにくいもの)

  • 入社後の研修・OJTに費やすベテラン社員の時間
  • 仕事を覚えるまでの新人のミスによるロス
  • 早期退職後、次の採用を始めるまでの業務穴埋めコスト

これらをまとめると、中小企業で一般職を1人採用・定着させるまでの総コストは、50〜100万円規模になることが珍しくありません。

2. 早期退職が起きると何が発生するか

入社3ヶ月〜半年以内に退職が発生した場合、上記のコストはほぼ丸ごと損失になります。さらに、そこから追加のコストが発生します。

ケース:製造業・一般職を1名採用、4ヶ月で退職

項目 費用の目安
求人掲載費(ハローワーク+求人サイト) 10〜30万円
面接・採用事務の人件費(経営者・担当者) 10〜20万円相当
研修・OJT期間のベテラン社員の工数 20〜40万円相当
退職後の穴埋め(残業・外注・業務停滞) 10〜30万円相当
合計 50〜120万円以上

※ここに再採用コストが加わると、さらに50〜120万円追加になります。

数字は業種・規模によって異なりますが、「1人採用に失敗する=100万円前後の損失」は、決して誇張ではありません。

3. 「お金をかけない採用」が高くつく理由

採用費を抑えるために取りがちな行動と、その落とし穴を整理します。

①「とにかく早く決めよう」で妥協する

空白期間が続くプレッシャーから、「まあこの人でいいか」と採用基準を下げてしまうケース。入社後のミスマッチが高確率で発生し、早期退職につながります。

②「誰でも歓迎」で求人を広げる

ターゲットを絞らない求人は、合わない人の応募も多く集まります。面接数が増える割に採用精度は上がらず、選考にかかるコストだけが膨らみます。

③「採用できてからでいい」で情報整備を後回しにする

採用ページも社員紹介もない状態で求人だけ出しても、求職者が応募前に会社を調べる段階で離脱します。かけた広告費が無駄になります。

どのケースも、「今の費用を減らしたい」という動機が出発点です。でも結果として、採用失敗→再採用→追加コストというループに入ります。

4. コストを下げる本当の方法

採用コストを下げたいなら、「いかに安く募集するか」より「いかに早くミスマッチを防ぐか」を考える方が効果的です。

具体的には3つのポイントがあります。

① 求人票で「合わない人を来させない」

ターゲットを絞った求人票は、応募人数は減りますが、合う人からの応募に絞られます。「どんな仕事か」「どんな人が向いているか」を正直に書くことで、応募段階でのミスマッチを減らせます。

② 面接で「定着できるかどうか」を見る

スキルや経歴の確認だけで終わる面接は、定着リスクを見落とします。「なぜ前職を辞めたか」「どういう環境で力を発揮できるか」を丁寧に聞くことで、入社後のズレを事前に察知できます。面接での質問設計についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

③ 入社後の初期対応を手抜きしない

早期退職の多くは、入社後1〜3ヶ月の「放置」から起きます。業務を教える体制、困ったときに相談できる関係、定期的な対話——この初期投資を怠ると、採用コスト全体が無駄になります。

まとめ

  • 採用ミス1件の損失は、目に見えるコストだけでなく教育・穴埋め・再採用を含めると100万円以上になることがある
  • 「採用費を抑える」戦略は、失敗時のロスが大きくかえって高くつく
  • コストを本当に下げるには「失敗しない採用」に投資する発想への転換が必要

採用に何百万もかける必要はありません。でも「お金をかけない」と「失敗しない」は別の話です。失敗のコストを意識した上で、どこに投資するかを考えてみてください。


「自社の採用、どこにリスクがあるか見てほしい」という場合はお気軽にご相談ください。

→ 関連記事: 求人票で差がつく理由 / 採用面接で何を聞くべきか / 給与以外で選ばれた会社の話

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