2026年5月19日

求人票の「昇給」欄の書き方——書き方次第で応募数が変わる理由

「うちの給与は特別高くないから、書きようがない」——そう思っている経営者が少なくありません。

でも実際には、給与水準は同じでも、書き方によって求職者の受け取り方が変わることがあります。

「月給20万円」と「月給20万円〜(各種手当別途)」では、読んだときの印象が異なります。情報量が同じでも、表記の仕方で「この会社は安い」「この会社はちゃんとしている」という感覚の差が生まれやすくなります。

なかでも求職者が特に気にするのが「昇給」欄です。「昇給あり」の一言で終わらせている求人票は多いですが、それだけでは「本当に上がるのか」「どれくらい上がるのか」が伝わりません。この記事では、給与欄全体の書き方に加えて、昇給欄をどう書けば伝わるかをパターン別に解説します。

求職者は給与欄で何を確認しているか

求職者が給与欄を見るとき、単に金額の多寡だけを見ているわけではありません。次のような点を確認していることが多いです。

① 手取りがいくらになるか
額面の給与より、手取りがいくらかを気にする求職者は多いです。手当が別途あるのか、残業代の扱いはどうか——これらが読み取れないと「実際にいくらもらえるかわからない」という不安につながりやすくなります。

② 昇給・賞与の可能性があるか
「昇給あり」「賞与あり(業績による)」などの一言があると、「将来的に給与が上がる可能性があるか」を判断しやすくなります。記載がないと「ずっとこの金額のまま」と思われやすくなります。

③ 給与以外の収入(手当類)があるか
交通費・住宅手当・家族手当・食事手当など、手当の有無は実質的な収入に影響します。記載がないと「手当はなさそう」と判断されやすくなります。

昇給欄の書き方:パターン別テンプレート

「昇給あり」だけで終わらせず、自社の昇給の仕組みに合わせて次の3パターンから書き方を選ぶと、伝わり方が変わります。

パターン①:定期昇給(毎年一律または一定基準で上がる場合)

例:
昇給あり(年1回・4月/前年度実績:月3,000〜5,000円アップ)

時期・頻度・過去実績をセットで書くと、「いつ・どれくらい」が具体的にイメージできます。時期を明記するだけでも「制度として運用されている」という信頼感につながりやすくなります。

パターン②:査定昇給(評価・業績による場合)

例:
昇給あり(年1回・人事評価による/評価Bで月2,000円、評価Aで月5,000円が目安)

「業績による」とだけ書くと不透明に見えがちです。評価区分ごとの目安額を1〜2段階でも示すと、「頑張り次第で上がる」という納得感を持ってもらいやすくなります。

パターン③:号給制・等級制(給与テーブルがある場合)

例:
昇給あり(等級制・年1回見直し/入社3年目で主任クラス到達目安)

金額そのものを出しにくい場合は、「何年でどのクラスに到達しやすいか」というキャリアの見通しを示す書き方でも代替できます。数字を出せなくても、時間軸の目安があるだけで印象は変わりやすくなります。

昇給欄を書くときによくある迷い

Q. 具体的な金額を出すと、それが最低保証だと思われないか不安
A. 「前年度実績」「目安」という言葉を添えれば、確約ではなく参考情報であることは伝わりやすくなります。実績ゼロで書けない場合は、正直に「制度あり・実績はこれから」と書く方が、書かないより信頼されやすくなります。

Q. 昇給がない・見直し予定がない場合はどう書けばいいか
A. 無理に「昇給あり」と書く必要はありません。その代わり、賞与・手当・資格手当など他の収入増の要素があれば、そちらを具体的に記載してカバーします。

損をしやすい給与の書き方

パターン①:数字だけ書いて終わり

悪い例: 月給 200,000円

給与額だけでは、手当・昇給・残業代の扱いが一切わかりません。「これ以上もらえない会社」という印象になりやすいです。

パターン②:幅を持たせすぎる

悪い例: 月給 180,000〜350,000円

幅が広すぎると「実際のところいくらなの?」という不信感が生まれやすいです。採用側としては「能力次第でこのくらい差が出る」という意図でも、求職者には「ローエンドの18万円が基本なのかも」と受け取られやすくなります。

パターン③:条件が複雑すぎる

悪い例: 基本給150,000円+固定残業代30,000円(一定時間分の残業代を給与に組み込む形式)+各種手当

この書き方では「固定残業代が引かれた後の実態はどうなの?」と警戒されやすくなります。固定残業代を含む場合は、「固定残業代を含む場合の所定内給与がいくらか」を明示すると誠実な印象になりやすくなります。

印象が良くなりやすい給与の書き方

基本パターン:手当を別に記載する

例:
月給 200,000円〜
+交通費実費支給(上限月30,000円)
+住宅手当 10,000円〜20,000円
+家族手当 5,000円/人

同じ給与水準でも、手当が見えると「トータルで考えたら悪くない」という判断材料が増えます。手当をひとまとめにせず、種類と金額を分けて記載すると伝わりやすくなります。

賞与は具体的な実績を添える

例:
賞与あり(前年度実績:年2回・計2.5ヶ月分)

「あり」とだけ書くより、実績を添えた方が信頼性が増しやすくなります。「業績次第」という但し書きを加えても、実績数字があれば求職者の判断材料になります。

試用期間中の給与は明示する

試用期間中に給与が下がる場合は、必ず記載します。「試用期間中:月給180,000円(3ヶ月後に正規給与適用)」のように、条件と期間をセットで書くと誤解が生まれにくくなります。

記載なく入社後に告げると、「聞いていなかった」というトラブルにつながりやすいです。

給与欄を書く前に確認すること

給与欄を書き直す前に、次の点を整理しておくと内容が具体的になりやすくなります。

  • 自社の昇給の仕組み(定期/査定/号給制のどれか)と過去1〜3年の実績
  • 自社で支払っている手当の種類と金額
  • 賞与の支給回数と過去の実績額
  • 試用期間の有無と期間中の給与
  • 残業代の計算方法(固定残業制の場合はその内訳)

これらを整理した上で求人票に落とし込むと、求職者にとって判断しやすい給与欄になりやすくなります。

求人票全体の改善については「求人を出しても誰も来ない会社」と「すぐ埋まる会社」の違いとはも参考になります。また、給与水準そのものへの向き合い方については「給料が低いから採れない」は本当かで別途解説しています。

まとめ

  • 「昇給あり」の一言では伝わらない。定期昇給・査定昇給・号給制など自社の仕組みに合わせたパターンで書くと印象が変わる
  • 給与欄は「数字を並べる場所」ではなく「実際に稼げる金額を伝える場所」
  • 手当・賞与も種類別・実績付きで記載すると印象が変わりやすい
  • 幅が広すぎる・複雑すぎる表記は不信感につながりやすい
  • 試用期間中の給与は必ず明示する

給与水準を上げられなくても、書き方を変えることはできます。まず自社の昇給欄・給与欄を見直してみてください。


求人票の給与欄や全体的な書き方について、個別にご相談も承っています。気になった方はお気軽にどうぞ

→ 関連記事: 求人票で差がつく理由 / 給料が低いから採れないは本当か / 採用のセルフ診断

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