2026年9月2日
「シフトによる」だけでは伝わらない。変形労働時間制の求人票、どう書けば誤解されないか
「シフトによる」だけでは伝わらない。変形労働時間制の求人票、どう書けば誤解されないか
小売・飲食・製造・介護——交代制勤務がある業種の求人票を見ると、勤務時間欄に「シフトによる」の一言だけが書かれていることがあります。書く側にとっては当たり前の表現でも、読む側の求職者にとっては「結局、何時から何時まで働くのか」が分からないままです。この分かりにくさが、内定後の「思っていたシフトと違う」というミスマッチにつながることがあります。
この記事では、シフト制や変形労働時間制がある会社の求人票で、誤解を招きにくい勤務時間の書き方を解説します。
「シフトによる」が招く誤解
求職者が求人票の勤務時間欄を見るとき、知りたいのは「自分の生活とどう両立できるか」です。「シフトによる」という表記だけでは、次のような疑問に答えられません。
- 1日の勤務時間は何時間程度なのか
- 早番・遅番・夜勤といったパターンがどれくらいあるのか
- シフトの希望はどの程度通るのか、それとも会社側がほぼ決めるのか
- 週の休みは固定なのか、シフトによって変わるのか
これらが分からないまま応募し、面接で初めて実態を知った求職者は、「求人票と話が違う」と感じることがあります。この感覚のまま入社すると、早期離職につながりやすくなります。
この記事が扱う範囲
求人票の書き方を扱う記事はいくつかありますが、本記事が扱うのは「勤務時間」の項目に特化した内容です。
- 労働条件明示ルール改正は、2024年法改正で明示すべき項目が増えたという制度面の話です
- 給与欄の書き方は、給与という別の項目を扱っています
本記事は、シフト制・交代制勤務がある会社に特有の「勤務時間の伝え方」という実務ライティングに絞って解説します。制度対応や給与表記とは別の課題として、書き分けて読み進めてください。
シフトパターンを具体的に示す
「シフトによる」を、実際にどう書き換えられるか。まずはシフトパターンを具体的に示す方法です。
改善前
勤務時間:シフトによる
改善後の例
勤務時間:以下のシフトからの組み合わせ(月〜日で週5日程度)
・早番 7:00〜16:00(休憩1時間)
・遅番 13:00〜22:00(休憩1時間)
・夜勤 22:00〜7:00(休憩1時間、月4〜6回程度)
パターンを列挙するだけで、求職者は「自分の生活リズムに合うシフトがあるか」を判断できるようになります。夜勤の有無や頻度は特に確認されやすい項目のため、該当する場合は必ず明記することをおすすめします。
シフト希望の通りやすさを伝える
パターンを示すだけでなく、「希望がどの程度通るか」も求職者が気にするポイントです。
- 「シフト希望は月1回、前月20日までに提出」など、希望を出せるタイミングと頻度
- 「学業・家庭の事情に応じて相談可」など、希望が考慮される余地があるかどうか
- 「入社後〇か月はシフトを固定し、慣れてから希望制に移行」など、段階を踏む場合はその旨
希望の通りやすさに関する情報がないと、求職者は「シフトは会社の都合で一方的に決められるのでは」と不安に感じることがあります。実態に即して、伝えられる範囲で書いておくことをおすすめします。
変形労働時間制を採用している場合の書き方
1か月単位や1年単位の変形労働時間制を採用している場合、「所定労働時間が週によって変わる」という仕組み自体が、求職者にとって馴染みのない概念であることがあります。専門用語をそのまま書くだけでは伝わりにくいため、次のような補足を添えることをおすすめします。
改善前
勤務時間:1年単位の変形労働時間制による
改善後の例
勤務時間:1年単位の変形労働時間制を採用しています。繁忙期(12月〜2月)は1日8.5時間勤務、閑散期(6月〜8月)は1日7時間勤務など、時期によって所定労働時間が変動します。年間の総労働時間はあらかじめ労使協定で定めています。
制度名だけを書くのではなく、「なぜ時間が変動するのか」「繁忙期と閑散期でどう違うのか」を一言添えるだけで、求職者の理解度は変わりやすくなります。変形労働時間制は制度自体の適法な運用が前提となるため、記載内容が実際の労使協定と一致しているか、書く前に確認しておくことも重要です。
まとめ
- 「シフトによる」だけの求人票は、求職者の疑問に答えられず、内定後のミスマッチを招きやすくなります
- シフトパターンは、時間帯・頻度を具体的に列挙することで伝わりやすくなります
- シフト希望がどの程度通るかも、求職者が気にするポイントとして明記しておくと安心感につながります
- 変形労働時間制を採用している場合は、制度名だけでなく「なぜ変動するのか」を補足することをおすすめします
自社の求人票の勤務時間欄を、一度求職者の視点で読み返してみてください。求人票の書き方に迷いがあれば、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. シフトが毎月大きく変わる会社では、求人票にどこまで書けばいいですか?
毎月完全に固定できなくても、「早番・遅番・夜勤」といったパターンの種類と、それぞれのおおよその頻度を示すだけで、求職者の理解は進みやすくなります。
Q2. 変形労働時間制の詳細な条文をそのまま求人票に載せるべきですか?
条文をそのまま載せる必要はありません。求職者が知りたいのは「時期によって働く時間がどう変わるか」という実感であり、制度の背景を平易な言葉で補足する方が伝わりやすくなります。
Q3. シフト希望をほとんど考慮できない会社は、正直に書かない方がいいですか?
正直に書くことをおすすめします。希望が通りにくい実態を隠したまま採用すると、入社後のミスマッチによる早期離職につながりやすく、結果的に採用コストが増えることがあります。
→ 関連記事: 求人票通りに人を雇えていますか?2024年法改正で厳格化された「労働条件明示」のズレ / 「給料の書き方を変えたら応募が増えた」——求人票の「給与欄」は伝え方で印象が変わる / うちの採用、どこが間違ってる?——読みながらわかるセルフ診断