2026年9月5日

採用したのに「思っていた人と違う」——入社後ミスマッチが発覚したときの対応手順

採用したのに「思っていた人と違う」——入社後ミスマッチが発覚したときの対応手順

面接では確かに手応えがあった。それなのに、入社してみると「聞いていた話と違う」「期待していたスキルがない」——採用ミスマッチは、どれだけ選考を丁寧にやっても起こりうるものです。

問題は、ミスマッチが起きるかどうかではなく、発覚した後にどう動くかです。ここで感情的に「もう辞めてもらおう」と動くと、トラブルに発展しかねません。この記事では、入社後ミスマッチが発覚してから取るべき対応を、順を追って解説します。


この記事が扱う範囲

採用ミスの代償——採用ミス1件でいくら損するかという記事では、採用ミスがもたらす金銭的コストを可視化し、「失敗しない採用」への投資を訴えました。

本記事はコスト論には深入りしません。すでにミスマッチが発覚してしまった後、経営者・採用担当者が実際にどう動くべきかという対応フローに絞って解説します。面接段階でミスマッチを防ぐ方法は採用面接で何を聞くべきかで扱っているため、あわせて読むと予防と事後対応の両方をカバーできます。


なぜ「即解雇」がリスクなのか

ミスマッチが発覚した直後、「合わないなら早く辞めてもらった方がお互いのためだ」と考えたくなります。気持ちはわかりますが、この判断には法的リスクが伴います。

日本の労働法では、いったん雇用契約を結んだ従業員を解雇するには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要とされています。「期待していたスキルがなかった」「性格が合わなかった」というだけでは、この基準を満たすとは限りません。

不当解雇と判断されれば、解雇の無効や金銭的な補償を求められる可能性があります。だからこそ、ミスマッチが発覚したら「辞めさせる」ではなく「段階を踏んで対応する」という発想への切り替えが必要です。


フェーズ1:初期面談で事実確認をする

最初にやるべきは、感情的な印象を事実に変換する作業です。「なんとなく合わない気がする」のままでは、次の対応を決められません。

確認すべきこと

  • 具体的に何が「聞いていた話と違う」のか(業務内容、労働条件、社風など)
  • 本人はどう感じているか(会社への不満、自身の適性への疑問など)
  • 発生している問題は一時的なものか、継続的なものか

このタイミングで重要なのは、会社側からの一方的な指摘にしないことです。本人にも話す機会を設け、双方の認識のズレを言語化します。ミスマッチは会社側の説明不足が原因であることも少なくありません。

面談の内容は、日付・発言内容の要点を含めて記録に残しておいてください。後述する改善期間の設定や、万一のトラブル対応の際に必要になります。


フェーズ2:配置転換で解決できないか検討する

事実確認の結果、「業務内容が合っていない」というミスマッチであれば、配置転換で解決できる可能性があります。

たとえば、接客が苦手だが事務処理は正確、というケースでは、部署異動によって本人の適性を活かせることがあります。中小企業では異動先の選択肢が限られますが、検討する価値はあります。

配置転換を検討する際のポイント

  • 本人の希望・適性と、異動先で求められるスキルが合っているか
  • 異動によって別のチームに新たな負担がかからないか
  • 異動が「体のいい厄介払い」に見えないよう、本人に前向きな説明をする

配置転換の余地がまったくない、あるいは本人が異動を望まない場合は、次のフェーズに進みます。


フェーズ3:改善期間を設定する

配置転換で解決しない、または業務内容自体は合っているが「期待していたレベルに達していない」というミスマッチの場合、改善期間を設けます。

改善期間の設計で押さえるポイント

項目 内容
期間の目安 → 1〜3ヶ月程度
目標の明確化 → 「何ができるようになれば改善とみなすか」を具体的な基準で示す
フォロー体制 → 期間中、誰がどのくらいの頻度で指導・面談を行うか決めておく
記録 → 面談内容と本人の取り組み状況を都度記録する

ここで大事なのは、「改善の機会をきちんと与えた」という事実を作ることです。目標も指導もないまま「様子を見よう」で終わらせると、後で「会社は何も手を打たなかった」と評価されかねません。

改善期間中に本人の状況が好転すれば、それで対応は完了です。ミスマッチのすべてが「合わない人材だった」で終わるわけではなく、適切なフォローで定着に至るケースもあります。


フェーズ4:それでも改善しない場合の対応

改善期間を経ても状況が変わらない場合、次の選択肢を検討することになります。

契約社員・試用期間中の場合

試用期間中であれば、本採用の可否を判断するタイミングで契約を終了する選択肢があります。ただし試用期間中の解雇(本採用拒否)にも一定の合理性が求められるため、フェーズ1〜3の記録が重要な根拠になります。

正社員として本採用済みの場合

本採用後の解雇は、試用期間中よりもさらに高いハードルがあります。退職勧奨(本人との合意による退職)という選択肢もありますが、進め方を誤ると「事実上の解雇強要」とみなされるリスクがあります。

このフェーズに入ったら、自己判断で進めるのは避けてください。社会保険労務士や弁護士など労務の専門家に相談し、これまでの面談記録・改善期間の内容を示した上で、次の一手を検討することをおすすめします。専門家への相談は「トラブルが起きてから」ではなく「トラブルを起こさないため」に使うものです。


まとめ

  • 入社後ミスマッチは起こりうるものだが、即解雇はトラブルリスクが高い
  • 対応は「事実確認→配置転換の検討→改善期間の設定→それでも改善しない場合の対応」という段階を踏む
  • 各フェーズでの面談内容・改善への取り組みは記録に残しておく
  • 改善期間を経ても状況が変わらない場合は、自己判断せず社労士・弁護士など専門家に相談する

ミスマッチへの対応は、スピードよりも手順を踏むことが結果的にリスクを小さくします。感情的な判断で動く前に、まずは事実確認から始めてみてください。


→ 関連記事: 採用ミスの代償——採用ミス1件でいくら損するか / 採用面接で何を聞くべきか

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