2026年10月17日

応募書類の「履歴書」、昔の様式のまま使い続けていませんか

項目の多い古い履歴書と、項目を絞った履歴書を並べた机の上

応募者に渡している履歴書の様式、いつから同じものを使っていますか。

市販の履歴書や、昔から社内に置いてある様式をそのまま使っている会社もあります。ただ、その様式に採用判断に使わない項目が含まれていると、応募者の負担になるだけでなく、公正な採用選考の観点でも見直しておきたいところです。

結論から言うと、応募書類の項目は「選考で実際に使うもの」だけに絞るのが基本です。判断のよりどころとして、厚生労働省が示している履歴書の様式例があります。

この記事では、様式例で何が変わったか、性別欄・写真欄などをどう考えるか、自社の応募書類を見直す手順を整理します。

厚生労働省の履歴書様式例で、何が変わったのか

厚生労働省は2021年(令和3年)4月に、公正な採用選考の参考となる「履歴書の様式例」を示しました。

背景は、次のとおりです。

  • それまで厚労省は、日本規格協会(JIS)の履歴書様式例の使用を推奨していた
  • 2020年(令和2年)7月、同協会の規格解説から履歴書の様式例が削除された
  • そのため、公正な採用選考を進める参考として、厚労省が新たに様式例を示した

JIS規格の様式例との主な違いは、次の2点です。

項目 変更内容
性別欄  → 「男・女」の選択をやめ、任意記載欄に変更。未記載も可能
配偶者・扶養家族数・配偶者の扶養義務・通勤時間  → 欄そのものを設けない(削除)

厚労省の資料では、これらの欄はプライバシー性が高い情報であることなどを踏まえて見直された、とされています。

この様式例に法的拘束力はありません。使うかどうかは、個々の企業の判断です。ただし、別の様式を使う場合でも、就職差別につながるおそれのある項目を含めないよう留意が必要とされています。

※内容は厚生労働省の公表資料(「履歴書の様式例の作成について」、令和3年4月)にもとづきます。最新の様式例と解説は、厚生労働省またはハローワークのウェブサイトで確認してください。

性別欄・写真欄は、どう考えるか

次の2つの欄を、様式例の扱いに沿って整理します。

性別欄

様式例では「※性別」とし、注記で記載は任意、未記載も可能としています。選択式ではなく、本人が書く形です。趣旨は、性自認の多様なあり方への対応とされています。

また、厚労省は、性別欄の記載内容や、未記載であることを理由に採否を決めないよう求めています。性別を確認する必要がある場合は、面接等で適切な方法により、理由を説明して本人の納得のうえで確認し、回答を強要しないこととされています。

つまり、「性別欄は必須で、男・女に丸をつけさせる」形のままだと、様式例の考え方とはずれている、ということです。

写真欄

様式例には写真欄が残っています。ただし表記は「写真をはる位置」と「写真をはる必要がある場合」(サイズ、本人単身・胸から上、裏面のりづけ、の記載)という形です。

ここで押さえたいのは、次の点です。

  • 様式例は、写真を一律に必須としているわけではなく、貼る必要がある場合の指定という書き方になっている
  • 写真が本当に選考に必要かは、職種や業務内容によって異なる

たとえば、写真の有無や見た目が選考結果に影響していないのであれば、必須にする理由は弱くなります。反対に、写真が必要な理由がある場合は、なぜ必要かを社内で説明できる状態にしておきます。写真欄を「必須」から「任意」にするかどうかは、自社の判断です。

「全部書いてもらう」ことのリスク

項目が多い応募書類は、応募者にとっても負担になります。

  • 応募のハードル:項目が多く、書きたくない欄があると、応募をやめる人が出ることがあります
  • 公正採用の観点:本人に責任のない事項(家族、出生地、生活環境など)や、思想・信条に関わる事項を把握することは、望ましくないとされています
  • 管理の負担:集めた個人情報は、保管と廃棄を含め、会社が適切に管理する必要があります

応募フォームでの離脱の話は、求人サイトの応募ボタンを押す直前で離脱される理由でも扱っています。紙の履歴書でも、同じように考えられます。

自社の応募書類を見直す手順

次の手順で、項目をひとつずつ点検します。

  1. 現在の様式を並べる:履歴書、職務経歴書、エントリーシート、応募フォームの項目を書き出す
  2. 項目ごとに「使う場面」を書く:選考のどの段階で、何の判断に使うかを一言で書く
  3. 使う場面が書けない項目は、削除か任意にする
  4. 採用後に必要な情報は、内定後に別で集める:家族構成や通勤経路など、入社手続きで必要な情報は、選考とは切り分ける。なお、転勤や時間外労働の有無など業務上確認したい事項は、求人票に事前に記載するか、面接で全応募者に同じ質問をする形で扱う
  5. 厚労省の様式例と見比べる:性別欄、削除されている4項目(配偶者・扶養家族数・配偶者の扶養義務・通勤時間)が残っていないか確認する
  6. 面接官にも共有する:書類に書かれていない事項を、面接で聞き出していないかも確認する

面接での質問の考え方は、知らないと危ない。求人・面接で経営者がやりがちな法律NG行為にまとめています。

点検の目安

項目 見直しの視点
性別  → 選考で使う理由があるか。ない場合は削除、または任意記載にする(任意にするのは、性自認の多様なあり方への対応という趣旨)
写真  → 必須とする理由があるか。ない場合は任意、または不要にする
本籍・出生地  → 選考で使う場面は通常ありません。設けていないか確認する
家族構成・扶養  → 選考で使う場面は通常ありません。内定後の手続きで必要な範囲だけ、別で集める
通勤時間  → 様式例では削除。選考時に必須にする必要があるか確認する
志望動機・自己PR  → 選考で実際に読んでいるか。読んでいないなら簡素化も検討する

書類を絞ったあと、何で判断するか

項目を絞ると、「何を見て判断すればいいのか」と不安になる人もいます。

大事なのは、書類で見るポイントを先に決めておくことです。経験、スキル、働き方の希望など、仕事に関係する項目に基準を置けば、項目を絞っても判断はぶれにくくなります。基準の作り方は、書類選考で何を見るか——採用ミスを減らす3つの判断ポイントで整理しています。

まとめ

  • 厚労省は2021年4月に履歴書の様式例を示し、性別欄を任意記載に変更、配偶者・扶養家族数・配偶者の扶養義務・通勤時間の欄は設けない形にした
  • 様式例に法的拘束力はないが、別の様式を使う場合も、就職差別につながるおそれのある項目を含めないよう留意が必要
  • 性別欄は記載も未記載も可能とし、記載内容や未記載を理由に採否を決めない
  • 写真欄は様式例に残るが、「貼る必要がある場合」の書き方。必須にする理由があるかは自社で確認する
  • 項目は「選考のどこで、何の判断に使うか」が言えるものだけに絞る
  • 最新の様式例と考え方は、厚生労働省またはハローワークのサイトで確認する

応募書類の様式は、一度決めるとそのまま使い続けがちです。年に一度、項目を点検するだけでも、応募者にとっても会社にとっても、無理のない形に近づけます。


自社の応募書類を点検したい、何を残して何を削るか迷う、というときは、気軽にご相談ください。

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