2026年7月24日

残業時間を求人票に書くと応募が減る、は本当か

「残業月20時間」と正直に書いたら応募が減るのではないか——そう考えて、求人票の残業時間欄を「ほとんどなし」「応相談」で濁している会社は少なくありません。

その気持ちは理解できます。ただ、曖昧にした結果として起きるのは「応募が減る」ことではなく、「入社後に辞める」ことです。残業時間は、書き方次第で応募のハードルにも、信頼の材料にもなる項目です。

残業時間を曖昧にする求人が招くもの

「ほとんどなし」の実態が違うと、早期離職につながる

求人票に「残業ほとんどなし」と書いてあったのに、入社してみたら月20〜30時間の残業が常態化していた——このギャップは、入社後のミスマッチとして最も表面化しやすいもののひとつです。

給与や仕事内容のズレであれば入社前に説明を尽くせる余地がありますが、残業時間のズレは「実際に働いてみないと分からない」性質があるため、候補者側が入社前に気づきにくく、結果として早期離職の引き金になりやすい傾向があります。採用ミスの代償で触れたように、早期離職は再募集コストだけでなく教育コストや現場の負担も含めて、見えている以上の損失につながることがあります。

求職者は「書いていないこと」を悪い方に想像する

残業時間の記載がない、または「応相談」とだけ書かれた求人を見た求職者は、実態を良い方には想像しにくいものです。「書いていないということは、書けない実態があるのでは」と警戒することが多いです。

給与欄と同様に、求人票の給与欄は伝え方で印象が変わるで解説したのと同じ構造が、残業時間にも当てはまります。情報を隠すと、求職者はその空白を最悪のケースで埋めようとします。

正直に書くとかえって信頼される逆説

「残業月20時間」でも、書き方次第で印象は変わる

残業時間そのものをゼロにはできなくても、書き方によって求職者が受け取る印象は変わります。

悪い例: 残業月20時間程度

改善例: 残業月20時間程度(繁忙期は月末の3〜4日に集中、閑散期はほぼなし)

同じ「月20時間」でも、いつ・どんな理由で発生するかが分かると、求職者は自分の生活と照らし合わせて判断しやすくなります。数字だけを提示するより、発生パターンまで書いた方が、誠実さが伝わりやすい傾向があります。

残業代の扱いを明示する

残業時間とセットで気にされやすいのが、残業代がきちんと支払われるかどうかです。「みなし残業」「固定残業代」を採用している場合は、その仕組みと、超過分の扱いを明記しておくと、求職者の不安を減らせることがあります。

例: 固定残業代45,000円(20時間分)を含む。超過分は別途支給。

制度の名前だけを書くのではなく、「超過分がどうなるか」まで書くと、求職者が抱きやすい「結局サービス残業では」という疑念に先回りして答えられます。

「削減の取り組み」があれば、あわせて伝える

残業時間を削減する取り組みを進めている場合は、その内容もあわせて記載すると、単なる現状報告以上の印象を与えられることがあります。

  • ノー残業デーの実施状況
  • 業務効率化ツールの導入
  • 繁忙期の応援体制

「今は残業があるが、減らす方向で動いている」というメッセージは、「このまま放置される会社ではなさそうだ」という判断材料になりやすいです。

残業時間を書く前に社内で確認しておくこと

求人票に書く前に、次の点を社内で整理しておくと、実態に即した記載がしやすくなります。

  • 過去3〜6ヶ月程度の平均残業時間(部署・職種別に差がある場合は分けて把握する)
  • 残業が集中する時期・曜日・業務内容
  • 残業代の計算方法(固定残業制の場合は超過分の扱い)
  • 残業削減に向けた取り組みの有無

これらを整理しないまま「ほとんどなし」と書いてしまうと、後から実態との差が問題になりやすくなります。求人票の「仕事内容」欄はこう書けでも触れたように、抽象的な表現より具体的な情報の方が、求職者にとっても会社にとっても判断材料になります。

まとめ

  • 残業時間を曖昧にすると、応募は減らなくても入社後のミスマッチ退職につながりやすい
  • 求職者は「書いていないこと」を悪い方に想像する傾向がある
  • 残業時間は数字だけでなく、発生パターン・残業代の扱い・削減の取り組みまで書くと信頼されやすい
  • 書く前に自社の残業実態と残業代の仕組みを整理しておくと、記載の精度が上がる

残業時間を正直に書くことは、応募数を減らす行為ではなく、入社後のミスマッチを防ぐための情報提供です。まずは自社の残業実態を数字で把握するところから始めてみてください。

自社の求人票の残業時間欄の書き方について、気になる点があればお気軽にご相談ください


→ 関連記事: 求人票の「仕事内容」欄はこう書け / 求人票の「給与欄」は伝え方で印象が変わる / 採用ミスの代償——採用ミス1件でいくら損するか


よくある質問

Q1. 残業が多い会社は、正直に書くとやはり応募が減りますか?
残業時間の多さだけを理由に応募が減るとは限りません。発生パターンや残業代の扱いなど、背景情報まで書くことで、応募が減る度合いを抑えられることがあります。

Q2. 「応相談」と書くのは避けた方がいいですか?
「応相談」という表記自体が問題というより、実態を確認できる情報が他にない状態が問題です。平均的な残業時間や繁忙期の目安を添えた上での「応相談」であれば、悪い印象にはなりにくいです。

Q3. 固定残業代を採用していますが、求人票にどう書けばいいですか?
固定残業代に含まれる時間数と金額、超過分の扱いを明記してください。「みなし残業あり」とだけ書くと、超過分がどうなるか分からず不安を与えやすくなります。

Q4. 残業削減の取り組みを始めたばかりで、まだ実績がありません。書いても大丈夫ですか?
実績が出る前でも、取り組んでいる事実を書くこと自体に意味があります。「導入予定」「取り組み中」と正直に書けば大きな問題にはなりにくいです。

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