2026年5月16日

「地元で有名なのに応募が来ない」——「知ってる会社」と「行きたい会社」は別の話

「うちは地域で知らない人はいないくらい有名なのに、なんで求人に誰も来ないんだろう」——この言葉を口にする経営者が、少なくありません。

地元では顔が広い。地域のイベントにも毎年出ている。銀行でも役所でも「〇〇さんとこ」と通じる。それでも採用だけはうまくいかない。

この記事では、求人票の書き方ではなく「情報発信のあり方」に絞って、その理由と対策をお話しします。

「知名度」と「採用力」は別物

地域で知られている、ということは大きな強みです。ただし、それは「地域の一員として認知されている」という意味であって、「働きたい会社として認識されている」わけではありません。

考えてみてください。近所に昔からある工務店の名前を知っていても、そこで働くかどうかはまったく別の判断です。「知っている会社」と「働きたい会社」の間には、越えるべき壁があります。

採用も同じです。「〇〇さんとこは知ってる」という状態から「応募してみよう」に変わるには、もう一段階、情報が必要です。その一段階こそが「採用のための情報発信」——採用広報と呼ばれるものです。

「知ってるけど応募しない」会社の共通点

地域で知名度があるにもかかわらず採用に苦戦している会社には、共通したパターンがあります。

会社の「内側」が一切見えない

事業内容や実績は伝わっていても、「そこで働いている人」の姿が見えません。どんな人が、どんな仕事を、どんな雰囲気でしているのか。これがわからない状態では、求職者は「応募していいか」が判断できません。

「信頼はあるが、自分が働ける場所のイメージがない」——これが知名度だけがある会社の典型的な状態です。

「昔ながらの会社」というイメージが固定されている

地元で長く事業を続けている会社ほど、知名度がある一方でイメージが固まりやすくなります。「厳しそう」「融通が利かなそう」「ちょっと古い社風かな」——こうした漠然とした印象が、特に若い求職者の応募意欲を削いでいます。

このイメージを変えるためには、実態を積極的に見せていくしかありません。何も発信しなければ、古いイメージはそのままです。

求職者が調べようとしても情報がない

多くの求職者は、気になった会社を検索します。ハローワークで見た求人に興味を持ったとして、次に会社名でネット検索するのは自然な行動です。

そこでホームページが10年前のまま更新されていない、社員の顔が一切出てこない、採用情報のページがない——となると、判断する材料がありません。「なんか不安」で応募をやめます。知名度があっても、検索で何も出てこなければ信頼は薄れます。

「行きたい会社」に変わる情報発信の条件

「知ってる」を「行きたい」に変えるために必要なのは、会社の「内側を見せること」です。具体的には、次の3つが伝わると求職者の行動が変わります。

働いている人の顔と声

社長のメッセージだけでは足りません。現場で働いている社員の顔・名前・仕事への一言が見えると、「自分もここで働けるかもしれない」という具体的なイメージが生まれます。どんな人が働いているかがわかると、職場の雰囲気が伝わります。

仕事の「リアル」

1日の流れ、仕事の現場の様子、繁忙期と落ち着く時期の違い——こういった「実態」が少し見えるだけで、求職者の安心感は大きく変わります。「思ってたのと違った」というミスマッチも減ります。

会社の「空気感」

朝礼の様子、休憩室での一コマ、作業風景の写真——細かいことでも、繰り返し発信することで会社の雰囲気が伝わります。言葉よりも、写真一枚の方が空気感は届きます。

今日から始められる情報発信の第一歩

大がかりな採用ページを作らなくても、今日からできることはあります。

① Googleビジネスプロフィールに現場写真を1枚追加する

Googleで会社名を検索したときに表示される情報欄(Googleビジネスプロフィール)に、職場の写真を追加できます。事務所の外観だけでなく、現場の作業風景や社員の様子を1枚加えるだけで「どんな場所か」が伝わります。費用はゼロです。

② 求人票の補足欄に社員のコメントを一つ入れる

ハローワークの求人票にも、仕事内容の補足や特記事項を書ける欄があります。「入社4年目の田中です。仕事は覚えることが多かったですが、先輩が丁寧に教えてくれました」——この一文があるだけで、求人票の印象は大きく変わります。

③ ホームページのスタッフ紹介ページに顔写真と一言を追加する

既にホームページがあるなら、スタッフ紹介ページを更新するだけで効果が出ます。顔写真と「この仕事を選んだ理由」「職場のいいところ」を一言添えるだけで、読んだ求職者に「ここ、いいかも」と思ってもらいやすくなります。

④ SNSで採用関連の投稿を月1〜2回続ける

FacebookやInstagramで「社員の紹介」「仕事現場の一枚」「ちょっとした日常」を月1〜2回投稿してみましょう。地域のグループに参加したり、地名や業種をハッシュタグに含めたりすることで、知らない人の目に触れる機会が生まれます。フォロワー数より継続性が大事で、「あ、また更新してる」という積み重ねが信頼につながります。

まとめ

  • 地域の知名度は「採用力」ではなく「認知」にすぎない
  • 「知ってる」が「行きたい」に変わるには、会社の内側を見せる情報発信が必要
  • 働く人の顔・仕事の実態・職場の空気感が伝わると、求職者の判断材料になる
  • 金銭的な費用をかけずに始められることから、一つ取り組むことが出発点(撮影や投稿に時間は少しかかります)

大きな予算は必要ありません。求職者に「ここで働く自分」をイメージしてもらえるかどうか——そのための情報を、少しずつ外に出していくことが採用広報の本質です。


 

採用広報をどう始めるか、個別の状況に合わせてご相談にも乗ります。気になった方はお気軽にどうぞ。

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