2026年9月14日
採用業務は「誰の仕事か」で揉める会社の役割分担の決め方
「求人票、誰が書くんでしたっけ」「面接の日程調整、うちの部署じゃないですよね」——採用の場面でこうした押し付け合いが起きる会社は少なくありません。
原因は担当者の能力や意欲ではありません。誰がどこを担当するかが決まっていないことそのものです。専任の人事担当がいなくても採用を回している会社の記事では、専任者がいないこと自体は問題ではなく、仕組みの有無が差を生むと述べました。今回はその仕組みの中でも、押し付け合いが起きやすい「役割分担」という一点に絞って掘り下げます。
なぜ採用業務は押し付け合いになりやすいのか
採用業務は、総務・現場・社長のどの部署の本来業務にもきれいに収まりません。
- 総務は「採用は経営判断が絡むから自分の範囲外」と考える
- 現場は「自分たちは日々の業務で手一杯、採用は管理側の仕事」と考える
- 社長は「誰かが気づいて動いてくれるだろう」と考える
三者それぞれの考え方は、それぞれの立場からは一定の合理性があります。しかし、この「自分の担当ではない」という認識が重なった結果、応募対応や面接調整のような、本来は誰かが必ずやらなければならない作業が抜け落ちることがあります。
押し付け合いが起きる3つの典型パターン
パターン1: 「気づいた人がやる」運用
担当が明確でないまま運用していると、応募が来ても「誰かが見るだろう」という空白の時間が生まれます。応募への返信が遅れるほど、候補者の気持ちは他社に流れやすくなります。
パターン2: 「頼まれたらやる」の待ち姿勢
総務も現場も、自分から採用業務に踏み込まず、社長から指示されるまで動かない状態です。社長が多忙で指示を出すタイミングを逃すと、求人票の更新や面接日程の調整が止まりやすくなります。
パターン3: 「これは自分の仕事じゃない」の言い合い
応募対応の遅れや面接のドタキャンといった問題が起きたときに、「なぜ対応しなかったのか」を関係者同士で押し付け合う状態です。原因を人に求めている間、次の応募者への対応もまた後回しになりやすくなります。
いずれのパターンも、担当者個人の問題ではなく、そもそも役割の線引きが存在しないことが根本原因です。現場社員を採用に巻き込む記事で触れたとおり、現場を採用に関わらせること自体は有効な手段ですが、関わり方の範囲が曖昧なまま巻き込むと、今回のような押し付け合いの火種になることもあります。
役割分担表を作る3つのステップ
押し付け合いを防ぐには、感覚や慣習に頼らず、採用業務を工程ごとに分解して担当を明文化する必要があります。
ステップ1: 採用業務を工程に分解する
まず、採用の一連の流れを工程単位で書き出します。
- 求人票の作成・更新
- 求人媒体への掲載・掲載期間の管理
- 応募受付・一次返信
- 面接日程の調整
- 面接の実施
- 合否連絡
- 内定者フォロー
- 入社手続き
工程を洗い出さずに「採用業務全体」を一括りに担当を決めようとすると、どこかの工程が抜け落ちることがあります。
ステップ2: 工程ごとに担当と権限を割り当てる
工程ごとに「実務担当」と「最終判断者」を分けて決めます。実務を誰がやるかと、最終的に誰が判断するかは、必ずしも同じ人物である必要はありません。
| 工程 | 実務担当 | 最終判断者 |
|---|---|---|
| 求人票の作成・更新 | →総務 | →社長 |
| 媒体掲載・期間管理 | →総務 | →総務 |
| 応募受付・一次返信 | →総務 | — |
| 面接日程の調整 | →総務 | — |
| 面接の実施 | →社長・現場責任者 | →社長 |
| 合否連絡 | →総務 | →社長 |
| 内定者フォロー | →現場責任者 | →社長 |
| 入社手続き | →総務 | — |
この表はあくまで一例です。会社の規模や体制によって、総務がいない・現場責任者が採用に関わりにくいといった事情があれば、実態に合わせて割り当てを変える必要があります。
採用マニュアルの作り方は「各工程を誰がどう進めるか」という手順・使用ツールの整備が中心でした。一方、押し付け合いが起きている会社にまず必要なのは、手順の精度を上げることではなく、「実務担当」と「最終判断者」を分けて権限の所在をはっきりさせることです。手順が整っていても、担当と権限が決まっていなければ、結局「誰がやるか」で揉めることになります。マニュアルは、この役割分担が固まったあとに、担当者が変わっても同じ水準で対応できるようにするための次の一手として位置づけてください。
ステップ3: 表を関係者全員に共有し、期限を決めて運用する
役割分担表を作っただけでは押し付け合いは止まりません。関係者全員が同じ表を見ている状態を作り、さらに「応募受付から一次返信まで24時間以内」のように、工程ごとの対応期限も併せて決めておくことが欠かせません。
期限のない役割分担表は、「担当は決まっているが、いつまでにやるかは決まっていない」状態を生み、結局対応が後回しになりがちです。
役割分担表を作っても揉める場合
表を作ってもなお押し付け合いが解消しないときは、次の2点を確認してください。
表の存在自体が周知されていない
作成した本人以外が表の存在を知らなければ、運用は始まりません。採用に関わる全員が見られる場所に置き、変更があれば都度共有する必要があります。
担当者に権限が伴っていない
「実務担当」に割り当てられていても、判断に必要な情報や決裁の権限が与えられていなければ、担当者は動きたくても動けません。実務担当と最終判断者を分けた場合は、実務担当者がどこまで自分で判断してよいかも明確にしておく必要があります。
まとめ
- 採用業務の押し付け合いは、担当者個人の問題ではなく、役割の線引きがないことが原因
- 「気づいた人がやる」「頼まれたらやる」「これは自分の仕事じゃない」という3つの典型パターンは、いずれも役割分担の不在から生じる
- 採用業務を工程ごとに分解し、「実務担当」と「最終判断者」を分けて役割分担表を作ることで、押し付け合いを防げる
- 表を作るだけでなく、関係者への共有と対応期限の設定、担当者への権限付与までセットで行う必要がある
自社に合った役割分担の設計や運用ルールの整備は、社労士や採用支援会社に相談しながら進めると、抜け漏れなく形にしやすくなります。役割分担の決め方に迷ったら、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. 採用担当は総務と現場、どちらに置くべきですか?
どちらが正解ということはありません。会社の規模や現場の忙しさによって適切な配置は変わります。重要なのは、どちらに置くかを決めたうえで、工程ごとの担当を明文化することです。
Q2. 社長がすべての工程で最終判断者になる必要はありますか?
必須ではありません。媒体掲載の期間管理や応募受付のように、社長の経営判断を必要としない工程は、実務担当にそのまま判断を委ねてもかまいません。判断が必要な工程とそうでない工程を切り分けることが役割分担表の目的の一つです。
Q3. 役割分担表を作る時間が取れない場合、どこから始めればよいですか?
すべての工程を一度に整備する必要はありません。まずは押し付け合いが実際に起きている工程(よくあるのは応募受付や面接調整)だけを対象に、担当と期限を決めることから始めるとよいでしょう。
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