2026年8月2日

採用が決まったら何をする?社会保険手続きの基礎

内定通知書を出し、入社日も固まった。ここで一区切りついた気持ちになりがちですが、採用の実務はまだ終わっていません。次にやるべきことのひとつが、健康保険・厚生年金・雇用保険という社会保険の加入手続きです。

人事を兼務する経営者にとって、この手続きは「毎年やることではないから、毎回思い出すのに時間がかかる」タイプの作業です。届出先も期限も保険の種類ごとに異なるため、ここで一度整理しておきます。

内定通知書の次に来る、もう一つの実務

内定通知書、テンプレのままで大丈夫?法的に必要な記載事項では、内定の時点で労働条件を書面で明示する義務が発生していることを説明しました。労働条件通知書を交付し、入社日が確定したら、次に控えているのが社会保険の加入手続きです。

この手続きは、内定通知書の作成とは別の窓口(年金事務所・ハローワーク)に対して、それぞれ決まった期限内に届出をする必要があります。「入社してから落ち着いて考えよう」と後回しにすると期限を過ぎてしまうことがあるため、入社日が決まった時点で準備を始めておくと安心です。

健康保険・厚生年金保険の加入手続き

健康保険と厚生年金保険は、どちらも日本年金機構(年金事務所)が窓口です。

  • 届出書類: 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
  • 提出期限: 入社日(資格取得の事実があった日)から 5日以内
  • 提出先: 管轄の年金事務所(電子申請も可能)

期限が「5日以内」と短いのが特徴です。入社日当日に届出内容がすべて確定していなくても対応できるよう、事前にマイナンバーや基礎年金番号の確認を済ませておくと、期限内の提出がしやすくなります。

配偶者や子どもなど被扶養者がいる場合は、同じタイミングで「健康保険被扶養者(異動)届」も提出します。配偶者が第3号被保険者に該当する場合は「国民年金第3号被保険者関係届」も必要です。まとめて出せる書類のため、面談時に家族構成を確認しておくと手続きがスムーズです。

雇用保険の加入手続き

雇用保険は、健康保険・厚生年金とは窓口も期限も異なります。

  • 届出書類: 雇用保険被保険者資格取得届
  • 提出期限: 資格取得の事実があった日の属する月の翌月10日まで
  • 提出先: 管轄のハローワーク(公共職業安定所)

健康保険・厚生年金は「5日以内」、雇用保険は「翌月10日まで」という違いを覚えておくと、期限管理の混乱を減らせます。

中途採用の場合は、前職での雇用保険加入歴を確認する必要があります。前職で発行された「雇用保険被保険者証」に記載の被保険者番号があれば、それを資格取得届に記入します。番号が分からない、あるいは被保険者証を紛失している場合でも、氏名・生年月日等からハローワークで照会できることがあるため、必ずしも再発行を待つ必要はありません。

パート・アルバイトの場合は加入条件を先に確認する

正社員をフルタイムで雇う場合は、基本的に社会保険・雇用保険とも加入対象になります。一方、パート・アルバイトを採用する場合は、まず加入条件に当てはまるかどうかの確認が必要です。

健康保険・厚生年金保険の場合、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ職場の正社員の4分の3以上であれば加入対象です。4分の3未満であっても、従業員数が51人以上の企業(特定適用事業所)では、週の所定労働時間が20時間以上・賃金月額8.8万円以上・雇用期間2か月超の見込み・学生でないことという条件をすべて満たす短時間労働者も加入対象になります(休学中の者や、卒業前に就職し卒業後もそのまま雇用される者などは例外として対象になる場合があります)。30名前後の会社であれば特定適用事業所の対象外であることが多いですが、今後の従業員数の推移によって条件が変わる可能性があるため、該当するかどうかは一度確認しておくとよいでしょう。

雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用が見込まれる場合に加入対象となります。学生は原則対象外ですが、卒業予定で卒業後もそのまま継続雇用される場合など、例外もあります。

入社前に本人から集めておきたいもの

届出をスムーズに進めるため、入社前の段階で次のものを確認・回収しておくと、5日以内という短い期限にも対応しやすくなります。

  • マイナンバーが分かる書類(マイナンバーカードや通知カードなど)
  • 前職の雇用保険被保険者証(雇用保険の加入歴がある場合)
  • 年金手帳や基礎年金番号が分かる書類(マイナンバーで代替できる場合が多い)
  • 被扶養者がいる場合は、その氏名・生年月日・マイナンバー等の情報

これらは内定通知書に添えて案内できる項目でもあります。提出書類の一覧に社会保険関連の項目も含めておくと、入社日当日に慌てずに済みます。

手続きを後回しにするとどうなるか

社会保険の届出が遅れると、健康保険証(または資格情報のお知らせ)の発行も遅れます。その間に本人が病院を受診すると、いったん医療費の全額を自己負担し、後日「療養費」として保険者に申請して還付を受ける手続きが必要になることがあります。本人にとっては一時的な立て替えと事務負担が発生する形になるため、避けられるなら避けたい手間です。

雇用保険についても、届出が遅れると本人の加入期間の記録に影響し、将来その従業員が離職した際の失業給付の判断に関わる可能性があります。入社時の届出は、退職時にはじめて問題として表面化することがある、という点も意識しておく価値があります。

まとめ

  • 健康保険・厚生年金保険は年金事務所へ、入社日から5日以内に資格取得届を提出する
  • 雇用保険はハローワークへ、翌月10日までに資格取得届を提出する
  • パート・アルバイトは、所定労働時間や雇用期間の見込みによって加入対象かどうかが変わるため、採用前に条件を確認する
  • マイナンバーや前職の雇用保険被保険者証など、入社前に集めておくと手続きが進めやすくなる書類がある

内定通知書を出して終わりではなく、入社日が決まった時点から届出の準備を始めることで、5日以内という短い期限にも落ち着いて対応できます。


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よくある質問

Q1. 社会保険の加入手続きは、内定通知書と同じタイミングで進めてよいですか?
届出自体は入社日が確定してから行うものですが、必要書類の案内や本人からの情報収集は内定通知書を出すタイミングで一緒に進めておくと、入社後の期限に対応しやすくなります。

Q2. 試用期間中は社会保険に加入しなくてもよいのでしょうか?
試用期間であっても、加入条件を満たしていれば入社日から加入対象になります。試用期間の有無は社会保険の加入義務とは別の話として扱う必要があります。

Q3. 届出を電子申請にすることはできますか?
健康保険・厚生年金保険、雇用保険とも、e-Govなどを通じた電子申請が可能です。窓口へ出向く時間を減らせるため、慣れてくれば電子申請への切り替えを検討する価値があります。

Q4. 前職の雇用保険被保険者証が見つからない場合はどうすればよいですか?
本人の氏名・生年月日等の情報があれば、ハローワークで被保険者番号を照会できることがあります。再発行を待つ前に、まずハローワークへ確認することをおすすめします。

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