2026年7月28日

地方だからこそ効きやすい。「出戻り採用」という選択肢

求人媒体を増やす、SNSで発信する、紹介を増やす——応募数を増やす打ち手を考えるとき、多くの経営者はまず「新しい人にどう出会うか」を考えます。ですがその前に、すでに自社のことを知っている人材プールを見落としていることがあります。一度自社を辞めた元社員です。

出戻り採用(アルムナイ採用)は、退職者を「もう関わりのない人」ではなく「将来また働いてくれるかもしれない人材」として捉え直す採用の考え方です。特に候補者の母数自体が限られる地方では、この人材プールに目を向けることが有効な選択肢になりやすいといえます。

なぜ地方で出戻り採用が効きやすいのか

転職先の選択肢が都市部より少ない

地方では同じ職種・同じ業界の求人自体が都市部ほど多くありません。一度他社に転職しても、数年働くうちに「思っていた職場と違った」「前の会社の良さに気づいた」と感じる人が一定数出てきます。転職先の選択肢が限られる地方では、そうした人が「戻る」という選択肢を検討しやすい環境にあるといえます。

「知っている会社」への安心感が転職の壁を下げる

「地元で有名なのに応募が来ない」で触れたように、地方では「知っている会社」であることと「行きたい会社」であることは別の話です。ただし出戻り候補者の場合は事情が異なります。実際に働いた経験があるため、社風・仕事内容・人間関係をすでに知った上で応募を検討できます。この「知っている」という前提があることで、通常の転職より心理的なハードルが下がりやすくなります。

採用コストと立ち上がりの早さ

出戻り社員は業務の基本や社内のルールをすでに理解していることが多く、教育コストや立ち上がりまでの期間を抑えられる場合があります。人手不足の中で即戦力を求めがちな地方中小企業にとって、この点は特に魅力に感じられやすい要素です。

出戻りを「検討すらしない」経営者が多い理由

出戻り採用が有効な選択肢になり得るにもかかわらず、実際には検討の候補にすら挙がらないケースが少なくありません。背景には、いくつかの心理的な壁があります。

  • 「裏切られた」という感情が残っている: 退職を「自社を見限られた」と受け止めたまま、当時の感情を引きずっているケースがあります
  • 社内の公平感への懸念: 「一度辞めた人間を簡単に受け入れると、他の社員に示しがつかない」という不安を持つ経営者もいます
  • 戻ってきてもまたすぐ辞めるのではという不安: 過去に一度離れた実績があることを、リスクとして捉える見方です

これらの懸念自体は理解できるものですが、退職理由や退職時の状況を個別に確認しないまま一律に「出戻りは検討しない」と決めてしまうと、有効な人材プールを最初から手放すことにもなりかねません。

出戻りを受け入れる仕組みをつくる

出戻り採用は「戻ってきたい人がいたら考える」という受け身の姿勢では機会を逃しやすくなります。以下のような仕組みを整えておくと、出戻りという選択肢が実際に機能しやすくなります。

円満退職を「投資」として扱う

出戻り採用の土台になるのは、退職時の関係性です。円満に送り出した元社員は、将来的な出戻り候補になるだけでなく、取引先や知人への紹介元になる可能性もあります。採用担当が変わっても崩れない引き継ぎ設計と同様に、退職時の対応も一時的な事務処理ではなく、将来につながる関係づくりの一部として扱う視点が役立ちます。

元社員とのゆるいつながりを保つ

年賀状・SNSでのつながり・社内イベントへの案内など、負担の大きくない範囲で元社員との接点を維持しておく方法があります。連絡先が途切れてしまうと、戻りたいと思ったタイミングでも声をかける手段自体がなくなってしまいます。

「戻ってきてほしい」を言葉にする

退職時や退職後の挨拶で「もし機会があれば、また一緒に働けたら」と一言添えるだけでも、相手に「戻る選択肢がある」と伝わります。何も言わずに送り出すと、本人が「もう関わりを持ちにくい」と受け止めてしまう場合があります。

受け入れ基準を事前に決めておく

すべての退職者を無条件で歓迎するのではなく、採用ペルソナを持たない会社の盲点でも触れた「どんな人材を求めているか」の基準を、出戻りの場合にも当てはめておくと、社内の公平感への懸念にも対応しやすくなります。退職理由・在籍時の実績・退職後の状況などをふまえた基準をあらかじめ持っておくことで、個別判断のブレを抑えられます。

Uターン採用との違い

Uターン採用は、地元出身で都市部に出た人材を呼び戻す施策です。対象は「地元とのつながりはあるが、自社で働いた経験はない人」であり、出戻り採用とは対象がはっきり異なります。

出戻り採用は、自社で一度働いた経験がある元社員本人が対象です。すでに社風や業務を知っているという点で、Uターン採用よりも受け入れ後のミスマッチが起きにくいと考えられます。両者は競合する施策ではなく、地方の限られた人材プールに対して異なる角度からアプローチする、並行して検討できる選択肢といえます。

まとめ

  • 出戻り採用は、退職者を「既知の人材プール」として捉え直す採用の考え方で、候補者の母数が限られる地方では効果を発揮しやすい
  • 「知っている会社」への安心感、教育コストの低さが出戻り採用の強みになりやすい
  • 「裏切られた感情」「社内の公平感」への懸念から、検討の候補にすら挙げていない経営者も少なくない
  • 円満退職を関係づくりの一部として扱い、元社員とのゆるいつながりを保ち、受け入れ基準を事前に決めておくことで、出戻りという選択肢が機能しやすくなる
  • Uターン採用とは対象が異なり、地方の人材プールへの並行したアプローチとして検討できる

新規応募者を増やす施策に行き詰まりを感じたら、一度自社を離れた元社員という選択肢にも目を向けてみてください。

出戻り採用の進め方について、気になる点があればお気軽にご相談ください


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