2026年9月25日

社員紹介の謝礼金、3万円は安いのか高いのか。リファラル採用の相場と設計

「社員紹介の謝礼金、3万円で出してるんですが」——この金額を聞いて、高いと感じるか安いと感じるか。実はどちらの感想も間違っていません。答えは「どんな人を紹介してもらったか」次第だからです。

リファラル採用を始めたはいいものの、謝礼金の金額設定で手が止まる経営者は少なくありません。安すぎれば社員は動かず、高すぎれば予算を圧迫し、職業安定法上のリスクも上がります。リファラル採用の始め方や仕組みそのものはこちらの記事で解説済みのため、今回は謝礼金の金額の相場観と、支払いタイミングの設計パターンに絞って整理します。

1. 結論:相場のボリュームゾーンは5万〜20万円。ただし職種で大きく開きがある

リファラル採用の謝礼金は、全体としては5万〜20万円がボリュームゾーンです(Refcome)。ただし内訳は一様ではありません。エンジニアなど採用が難しい専門職では20万〜30万円が多く、特に希少な人材では50万円以上を設定する企業もある一方、営業・マーケティングや事務・サービス系では1万円未満というケースも少なくないとされています(Refcome)。社員紹介全体で見ると10万〜30万円程度が多いという調査もあります(ONE CAREER)。アルバイト・パートなど非正規採用では5千円〜1万円程度が中心です(Refcome)。

つまり謝礼金の相場は一律には語れず、対象となる職種の採用難易度によって大きく変わります。冒頭の「3万円」は、全体のボリュームゾーン(5万〜20万円)の下限にも届かない金額です。事務・サービス系のように相場が低めになりやすい職種の紹介であれば妥当な範囲に収まり得ますが、エンジニアなど専門職の紹介であれば相場から大きく外れている可能性が高いということになります。冒頭の「3万円は高いのか安いのか」という問いへの答えは、やはり「誰を紹介してもらったか次第」です。

謝礼金の「安さ」を強調する紹介記事も見かけますが、人材紹介会社を使えば紹介手数料は採用者の年収の25〜35%程度かかります(人材紹介の仕組みについての記事参照)。年収400万円の採用なら100万〜140万円です。金額だけを比べればリファラル採用の謝礼金は数万〜数十万円で済み、コスト面では有利に見えます。ただし人材紹介はマッチング精度や母集団形成力を担保するサービスであり、リファラル採用は紹介してくれる社員のネットワーク規模に依存するため、両者は単純に代替できるものではありません。金額の比較だけで優劣を決めるのではなく、自社の状況に合わせて使い分ける、くらいの位置づけで捉えるのが実務的です。

2. 支払いタイミングの設計:3パターン

謝礼金は「入社が決まったら一括で払う」だけが選択肢ではありません。目的に応じて、支払いタイミングを分けて設計するという考え方もあります。代表的な3パターンを紹介します。

パターンA:入社時一括

もっともシンプルな設計です。入社が確定した時点で全額を支払います。導入しやすい反面、「紹介した人がすぐ辞めた」というケースにも満額が出てしまう点が弱点です。

パターンB:入社時+定着時の二段階

入社時にメイン報酬(例:10万円)を支払い、入社3〜6ヶ月後の定着を確認したタイミングで残り(例:5万円)を追加支給する設計です(Refcome)。入社時と定着時に分けることで、早期離職の抑制につながりやすくなります。

パターンC:応募時の少額+入社時+定着時の三段階

応募・面談の段階で少額(例:5千円程度)を先に支払い、紹介そのものへのハードルを下げた上で、入社時・定着時にメインの報酬を分けて支給する設計です(Refcome)。「紹介する人数」を増やしたい会社に向いています。

どのパターンを選ぶにせよ、共通するのは「入社した瞬間がゴールではない」という考え方です。定着まで見届けて初めて紹介した社員にも報いる、という設計にしておくと、採用のミスマッチを紹介者側も気にかけてもらいやすくなります。

3. 職業安定法上の注意点

謝礼金は、何もルールなく支給していいわけではありません。職業安定法は、求職者と会社の間に第三者が介在して報酬を得ることを規制していますが、「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」は例外として認められています(Refcome)。

つまり、謝礼金を「賃金」として就業規則や賃金規程にあらかじめ明記した上で支給することが前提です。口頭の約束や慣例だけで払っていると、この例外規定の対象外と見なされるリスクが残ります。

また、金額があまりに高額になると法的リスクが増す傾向があり、30万円を超えるような設定は慎重な検討が必要とされています(Refcome)。対象者も正社員・契約社員などの社内の人間に限られ、退職者や社外の個人への支給は職業紹介事業の規制に触れる可能性があるため避けるべきです(Refcome)。制度を作る際は、就業規則への明記も含めて社労士に確認しておくと安心です。

4. 税務上の注意点

謝礼金を「賃金」として支給する場合、税務上は給与所得に該当し、毎月の給与と同様に所得税の源泉徴収と社会保険料の控除対象になります(ノンデスクHR)。紹介した社員が「謝礼金10万円のはずが、手取りはそれより少なかった」と驚くことのないよう、支給前に控除される旨を伝えておいた方がよいでしょう。

会社側から見ても、支給額に社会保険料の会社負担分が上乗せされるため、謝礼金の予算は額面よりやや多めに見ておく必要があります。ただし、控除される割合は扶養家族の数や前年の所得状況によって個人ごとに変わるため、この記事で一律の数字を示すことは避けます。正確な税務処理・控除額については、顧問税理士に自社のケースで確認することをおすすめします。

まとめ

  • 謝礼金の相場は全体で5万〜20万円がボリュームゾーン。専門職は20万〜30万円(希少人材は50万円以上)、事務・サービス系は1万円未満のケースも少なくなく、一律には語れない
  • 「3万円」はボリュームゾーンの下限にも届かない金額。妥当かどうかは誰を紹介してもらったか次第
  • 人材紹介会社の手数料(年収の25〜35%)と比べると金額面では有利に見えるが、両者は代替できるサービスではなく単純比較はできない
  • 支払いは入社時一括だけでなく、入社時+定着時の二段階、応募時少額+入社時+定着時の三段階という設計もある
  • 謝礼金は「賃金」として就業規則に明記した上で支給する。30万円超の高額設定や社外・退職者への支給は要注意
  • 税務上は給与所得として源泉徴収・社会保険料控除の対象。具体的な控除額は税理士に確認する

金額だけを決めて終わりにせず、支払いタイミングと社内規程まで含めて設計しておくと、リファラル採用の仕組みが長く機能しやすくなります。


謝礼金の設計や就業規則への落とし込みでお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

→ 関連記事: 「求人広告ゼロ」で採用している会社がやっていること——社員紹介採用の始め方 / 人材紹介会社に「良い人から」紹介してもらうための付き合い方

上部へスクロール