2026年8月26日
「他社の方が条件がいい」と言われたら——内定辞退の土壇場での対応
「他社の方が条件がいいので、辞退させてください」
内定を出した候補者からこの一言を聞いた瞬間、頭が真っ白になった経営者は少なくないはずです。反射的に給与を上乗せしたくなりますが、その場で即答すると、後になって「言わなければよかった」という状況につながることがあります。
土壇場の辞退連絡で本当に必要なのは、条件を積み増すことではなく、候補者が何を比較して迷っているのかを見極めることです。
なぜ土壇場で「条件」を理由にされるのか
内定者が辞退の理由として「条件」を挙げるとき、その言葉どおり給与や待遇だけが原因とは限りません。
- 本当に給与差が大きく、生活面で決断せざるを得ない
- 条件は口実で、実際は入社への不安や迷いが背景にある
- 他社からの好条件を、自社への交渉材料として伝えている
「条件がいい」という一言だけを受け取って給与交渉に走ると、実は不安が原因だった候補者には響きにくく、交渉材料として使われているだけの場合はきりがなくなることがあります。まず必要なのは、切り返すことではなく、聞くことです。
その場で確認すべきは「条件」か「不安」か
電話やメールで辞退の意思を伝えられたら、まず次の3点を確認します。
- 何と何を比較しているか——給与なのか、勤務地・休日なのか、仕事内容なのか。「条件」という言葉の中身を具体的に聞きます
- 金額や条件の差がどの程度か——月数千円の差なのか、年収で大きく開いているのかで、対応の選択肢は変わります
- 条件面以外に気になっていることはないか——入社後の働き方や人間関係など、言い出しにくい懸念が背景にあるかを確認します
この3点を確認するだけで、目の前の候補者が「条件さえ合えば残る」タイプなのか、「条件は口実で、本当は迷っている」タイプなのかが見えやすくなります。
その場での対応3ステップ
ステップ①感情的に引き止めず、まず理由を聞き切る
辞退の連絡を受けた瞬間に「待ってください、給与なら考えます」と即答すると、候補者は「言えば条件が動く会社」という印象を持ちやすくなります。まずは「詳しく聞かせてもらえますか」と、理由を最後まで聞くことから始めます。
ステップ②即答せず、持ち帰る姿勢を見せる
条件面での差が明らかな場合でも、その場で金額を提示するのは避けたほうが安全です。「他の社員とのバランスもあるので、一度社内で検討させてください」と伝え、いったん持ち帰ります。即決で条件を積み増す会社という印象がつくと、他の候補者や在籍社員にも影響しやすくなります。
ステップ③提示できる範囲と、できない範囲を明確に伝える
検討の結果、譲れる部分と譲れない部分がある場合は、その両方を正直に伝えます。「給与テーブル自体は変更できませんが、入社時期や役割については相談の余地があります」——できないことをぼかさずに伝えるほうが、条件だけで動く候補者かどうかの見極めにもつながります。
総論との違い
「内定を出したのに来なかった」——採用の「最後の1m」で失敗しないためにでは、内定後の連絡が途絶える・通知が事務的すぎるといった、辞退が起きやすくなる背景を全般的に扱いました。あの記事は「そもそも辞退が起きにくい状態をどう作るか」という予防の話です。
本記事はその予防が及ばず、実際に「条件がいい」と辞退を切り出された、まさにその瞬間にどう対応するかという各論に絞っています。前者が仕組みの話だとすれば、こちらは目の前の1本の電話にどう向き合うかの話です。
注意したい失敗:条件を丸ごと合わせようとする
辞退を防ぎたい一心で、他社の条件をそのまま丸ごと合わせようとする対応は避けたほうが安全です。既存社員との給与バランスが崩れることがありますし、そこまでして入社した候補者が、次に同じような話を持ちかけられたときにまた同じ交渉をしてくる可能性も残ります。
条件面の見直しが必要だと感じた場合は、目の前の1人への対応にとどめず、自社の採用条件そのものを見直すきっかけとして扱うほうが、長期的には効果的です。
うちの採用、どこが間違ってる?——読みながらわかるセルフ診断では、条件設定を含めた採用プロセス全体の見直しポイントを確認できます。
まとめ
- 「条件がいい」という言葉だけを受け取らず、条件面の差なのか、不安の口実なのかをまず見極める
- 即答で条件を積み増すのではなく、理由を聞き切ってから持ち帰る姿勢を見せる
- 譲れる部分と譲れない部分を正直に伝えることが、条件だけで動く候補者かどうかの見極めにもつながる
- 個別対応で終わらせず、必要なら自社の採用条件そのものの見直しにつなげる
土壇場の辞退連絡は、経営者にとって最も慌てやすい場面のひとつです。だからこそ、反射的に条件を積むのではなく、一度立ち止まって「何を比較されているか」を確認する余裕を持つことが、結果的に良い判断につながりやすくなります。
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