2026年8月12日

求人票通りに人を雇えていますか?2024年法改正で厳格化された「労働条件明示」のズレ

「求人票に書いた条件」と「実際に結んだ雇用契約の条件」、両方とも同じ内容になっていますか。

求人票は「応募を集めるための広告」、雇用契約書は「入社時の事務手続き」として別々に作られていることがあります。この2つがズレていても、誰も気づかないまま採用が進んでしまうことがあります。2024年4月の職業安定法施行規則改正で、募集段階から明示すべき労働条件の項目が増えました。このズレはこれまで以上に見直しの対象として意識しておく必要があります。

2024年4月、求人票の何が変わったのか

改正前から、求人票には業務内容・契約期間・就業場所・始業終業時刻・賃金・加入保険などの明示が義務づけられていました。2024年4月1日の職業安定法施行規則改正で、これに加えて次の項目の明示が新たに必要になりました。

新設された明示事項 内容の目安
従事すべき業務の変更の範囲 将来の配置転換等で担当する可能性のある業務の範囲
就業場所の変更の範囲 将来の異動等で就業する可能性のある場所の範囲
有期労働契約の通算契約期間・更新回数の上限(有期契約の場合) 契約更新の上限があるなら、その内容
無期転換申込機会・無期転換後の労働条件(有期契約更新時) 無期転換のルールに該当する場合の取り扱い

正社員採用であっても、将来的に他店舗・他部署への異動がありうるなら「就業場所の変更の範囲」「業務の変更の範囲」の記載が必要です。「今は本社勤務」という説明だけでは、将来配置転換をする可能性がある会社は明示義務を満たせていないことがあります。

求人票と実際の契約がズレやすい3つの場面

法改正で項目が増えたことに加えて実務上気をつけたいのが、もともとあった「求人票の内容」と「実際に結ぶ雇用契約の内容」のズレです。典型的には次の3つの場面で起きます。

  1. 募集時と内定時で条件が変わったのに、変更点を明示していない——求人票では「月給25万円〜」としていたのに、面接評価を経て実際は22万円で契約した、というようなケース。条件が変わること自体は問題ではありませんが、変更内容を明示せずに契約を進めるとトラブルにつながることがあります。
  2. 就業場所・業務内容の「変更の範囲」を求人票に書いていない——「営業職」として採用したつもりが、入社後に別部署への異動を命じたことで「聞いていた話と違う」と受け止められるケース。
  3. 求人票のまま雇用契約書を作らず、口頭だけで済ませている——求人票の内容を雇用契約書にそのまま転記せず、口頭の説明で終わらせてしまい、契約書自体に記載漏れが生じているケース。

内定の場面で書面に何を書くべきかは内定通知書、テンプレのままで大丈夫?法的に必要な記載事項で扱っています。本記事はその手前、募集段階(求人票)での明示義務に絞って整理します。

ズレが早期離職・トラブルに直結する理由

求人票と実際の条件のズレは、単なる事務ミスでは済まないことがあります。

  • 入社後に「話が違う」と感じた社員は、早期に退職を検討しやすくなります
  • 労働条件の明示不足は、労働局からの助言・指導の対象になることがあります
  • ズレが積み重なると、既存社員の間でも「求人票は話半分」という受け止め方が広がりやすくなります

条件を厳しく見せないための表現上の工夫(差別的表現・NG質問の回避)は知らないと危ない。求人・面接で経営者がやりがちな法律NG行為で扱っています。本記事のテーマである「明示義務」は表現の適法性とは別の切り口で、求人票に書くべき情報が漏れなく書かれているかという問題です。

今すぐ見直すべきチェックポイント

自社の求人票を、次の観点で見直してください。

  • [ ] 業務内容・契約期間・就業場所・始業終業時刻・賃金・加入保険など、従来からの明示事項に漏れがないか
  • [ ] 将来の配置転換等がありうる場合、「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」を明示しているか
  • [ ] 有期契約の場合、更新の上限や無期転換のルールを明示しているか
  • [ ] 求人票の内容と、実際に交付する雇用契約書・労働条件通知書の内容が一致しているか
  • [ ] 募集時から条件が変わった場合、変更内容を候補者に明示する運用になっているか

仕事内容欄そのものの書き方は求人票の「仕事内容」欄、こう書くと応募が変わる——具体的な書き方のポイントを、公開後の定期的な見直し運用は出しっぱなしはNG。求人票は3ヶ月に1回見直すべき理由を参考にしてください。

まとめ

  • 2024年4月の職業安定法施行規則改正で、求人票に明示すべき事項が増えた(業務・就業場所の変更の範囲、有期契約の更新上限等)
  • 法改正への対応だけでなく、求人票と実際の雇用契約条件のズレも見落とされやすいポイント
  • ズレは早期離職や労働局からの指導につながることがあり、放置していい問題ではない
  • 求人票・雇用契約書・実際の運用の3つが一致しているか、定期的にチェックする

求人票は「応募を集めるための広告」であると同時に、法律上の明示義務を負う書面でもあります。書いてある内容と実際の労働条件が一致しているか、気になる点があればお気軽にご相談ください


よくある質問

Q1. すでに公開している求人票も修正が必要ですか?
2024年4月1日以降に募集を行う場合は、新設された項目を含めて明示する必要があります。それより前から掲載している求人票も、募集を継続しているなら見直しの対象になります。

Q2. パート・アルバイトの求人票も対象ですか?
雇用形態にかかわらず、労働者を募集するすべての求人票が対象です。

Q3. ハローワーク以外(求人サイト・自社採用ページ)の求人票も対象ですか?
募集経路を問わず、労働条件の明示義務は適用されます。

→ 関連記事: 求人票の「仕事内容」欄、こう書くと応募が変わる——具体的な書き方のポイント / 出しっぱなしはNG。求人票は3ヶ月に1回見直すべき理由 / 知らないと危ない。求人・面接で経営者がやりがちな法律NG行為 / 内定通知書、テンプレのままで大丈夫?法的に必要な記載事項

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