2026年8月9日
整理整頓は採用対策だった。5S活動が応募者に与える印象
工場や事務所の床に部品や書類が散らばっている。デスクの上に段ボールが積まれている。候補者はそれについて何も言いません。でも、面接の帰り道で「あの会社はやめておこうかな」と感じていることがあります。
5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は、もともと生産性や安全のための取り組みとして語られてきました。しかし採用の視点で見ると、もうひとつの効果があります。職場の乱雑さは、候補者が無意識にチェックしている項目のひとつだからです。
5Sとは何か
5Sとは、次の5つの頭文字を取った職場環境改善の考え方です。
- 整理——要らないものを捨てる
- 整頓——必要なものを、必要なときにすぐ取り出せる状態にする
- 清掃——職場をきれいに保つ
- 清潔——整理・整頓・清掃の状態を維持する
- 躾(しつけ)——決めたルールを習慣として定着させる
製造業を中心に広まった手法ですが、事務所・店舗・介護施設など、職種を問わず応用できる考え方です。
候補者は「乱雑さ」を無言でチェックしている
面接や職場見学の場で、候補者から「もう少し整理整頓されているといいのですが」と直接言われることは、ほとんどありません。それでも、候補者の印象には残っている可能性があります。
- 通路や作業スペースに物が置きっぱなしになっていないか
- デスクや棚が整っているか、書類が山積みになっていないか
- 工具・備品が定位置に戻されているか
- 全体として「管理されている」空気があるか
こうした光景は、候補者にとって条件面ではわからない情報です。求人票には給与や勤務時間は書けても、「職場がどれくらい整っているか」は書きにくいものだからです。だからこそ、実際に足を運んだときの見た目が、そのまま会社の印象になりやすいと考えられます。
なぜ「乱雑さ」が採用にマイナスに働くことがあるのか
乱雑な職場を見た候補者が抱く印象は、単に「汚い」という感覚にとどまらないことがあります。
「管理が行き届いていないのでは」という不安
物が定位置にない、掃除が行き届いていない——そうした状態は、業務プロセス自体が整理されていないことの表れに見えることがあります。候補者は「この会社で働いたら、自分の仕事も雑に扱われるのではないか」と感じることがあります。
「安全面が心配」という不安
特に工場・建設・物流など、物理的な作業を伴う職種では、通路のふさがりや工具の乱雑な放置が、事故リスクを連想させることがあります。安全管理への信頼は、採用における条件面と同じくらい重視されることがあります。
「大切にされていない」という不安
汚れた休憩室、壊れたままの設備。こうした状態が放置されていると、「従業員の働く環境に投資していない会社」という印象につながることがあります。これは、給与水準そのものよりも、会社の姿勢に対する不安として残りやすい部分です。
いずれも、候補者が口に出して指摘することはほとんどありません。だからこそ、経営者側が能動的に気づき、手を打つ必要がある領域だといえます。
5S活動を「採用力向上への投資」として位置づける
5S活動は、多くの場合コストをかけずに始められます。新しい設備を導入するわけでも、給与を上げるわけでもありません。今あるものを、あるべき場所に戻す。それだけで、職場の見え方は変わっていくと考えられます。
ここで大切なのは、5S活動を「生産性のための社内活動」で終わらせず、「採用力向上のための投資」として経営者自身が位置づけ直すことです。位置づけが変わると、優先順位も変わります。忙しさを理由に後回しにされがちな整理整頓が、採用活動の一部として扱われやすくなります。
小さく始める5S活動の進め方
一気に全社的な取り組みにしようとすると、負担が大きくなり続きにくくなります。まずは候補者の目に触れる範囲から、小さく始めることをおすすめします。
ステップ① 候補者が実際に通るルートを洗い出す
面接会場までの通路、職場見学で案内するエリア、応接スペース。候補者の視界に入る場所をリストアップします。すべての現場を一度に整える必要はありません。
ステップ② 「整理」からすぐに始められる範囲で着手する
まずは要らないものを処分することから始めると取り組みやすくなります。整頓や清掃は、整理が終わってからの方が効率的に進めやすい傾向があります。
ステップ③ 定位置・ルールを決めて可視化する
工具や備品の置き場所にラベルを貼る、床にライン引きをするなど、「どこに何を置くか」を誰が見てもわかる状態にします。ルールが目に見える形になっていること自体が、管理されている印象につながりやすいと考えられます。
ステップ④ 定期的にチェックする仕組みを作る
一度きれいにしても、日々の業務の中で元に戻ってしまうことがあります。週1回・5分程度の簡単なチェックリストを作り、習慣として定着させると維持しやすくなります。
注意点:見せかけの整頓にならないように
候補者が来る日だけ急いで片付ける、という対応は避けたほうがよいでしょう。普段の状態と大きく異なると、入社後に「面接のときと違う」というギャップを感じさせ、早期離職のきっかけになりかねません。5S活動は、見せるための一時的な演出ではなく、日常的に維持できる状態を作ることが本来の目的です。
また、古い建屋や限られた予算の中では、どれだけ整理整頓しても設備の古さ自体は変わりません。その場合は、無理に隠そうとするより、整っている部分を丁寧に見せる姿勢のほうが、候補者に伝わりやすいと考えられます。
まとめ
- 5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は、生産性や安全のためだけでなく、採用における印象形成にも関わる取り組み
- 職場の乱雑さは、候補者が口に出さないまま「管理」「安全」「大切にされているか」への不安として受け取ることがある
- コストをかけずに始められるため、採用力向上への投資として位置づけ直すと優先順位を上げやすい
- 候補者の目に触れる範囲から小さく始め、来訪日だけの見せかけではなく日常的に維持できる状態を目指す
職場見学の運営方法については、採用面接に「職場見学」を組み込むもあわせてご覧ください。整った職場をどう見せるかという観点では、求人票の写真、何を撮ればいいかも参考になります。
整理整頓のような地道な取り組みが採用力にどう影響しているか、気になった方はお気軽にご相談ください。
→ 関連記事: 採用面接に「職場見学」を組み込む / 求人票の写真、何を撮ればいいか / 「採用してもすぐ辞める」——定着しない会社に共通する3つの習慣
よくある質問
Q1. 5S活動は製造業以外でも効果がありますか?
事務所・店舗・介護施設など、職種を問わず応用できる考え方です。デスク周りの整頓や書類管理も5Sの一部として扱えます。
Q2. 5S活動を始めるのに、まとまった予算は必要ですか?
多くの場合、大きな予算をかけずに始められます。ラベルやライン引き用のテープなど、低コストで用意できる道具から始める企業も少なくありません。
Q3. 忙しくてなかなか続きません。どうすればいいですか?
一度に全社的な取り組みにしようとすると負担が大きくなります。候補者の目に触れる範囲に絞って始め、週1回程度の簡単なチェックから習慣化していく方法がおすすめです。
Q4. 職場見学を実施していない会社でも意味がありますか?
面接時の応接スペースや、候補者がすれ違う可能性のある通路など、候補者の目に触れる場面は職場見学以外にもあります。見学の有無にかかわらず取り組む価値があると考えられます。